研究計画を考えるこの季節、修士論文や卒論に取り組む初学の方から
「アンケート調査をしようと思っています」
という言葉をよく耳にします。
アンケート自体は有用な手法ですが、残念ながらその多くが
「聞きたいことをとりあえず聞けばいい」という安易な発想に基づいているように思います。
なかには、まだ研究目的すら明確でない段階で
「次の指導の回に質問項目を仕上げたい」
「サポートしてもらえば1回で作れるでしょ」
といった姿勢の人もいて、正直なところ研究を軽んじているように感じてしまうのです。
アンケート調査は、単に知りたいことを羅列すれば成立するわけではありません。
研究目的や先行研究との関連が曖昧なまま質問を作ってしまうと、
分析段階になって
「何が言えるのかわからない」
「質問がバラバラで一貫性がない」
といった問題が噴出しがちです。
提出直前になってから大慌てで修正を試みても、すでに回収済みの回答データを再収集するのは困難ですし、そもそも作り直しには多大な労力がかかります。
既存の尺度を使う場合でも、
なぜその尺度が必要なのか、
先行研究ではどう使われどんな成果が得られたのか
を踏まえる必要があります。
さらに、自分の研究目的に合うように項目を削ったり追加したりする際には、
理論的根拠を示さなければなりません。
こうしたプロセスを丁寧に踏むことで、アンケート調査はようやく「研究」として成立します。
「サポートさえあれば一回で済むだろう」
という依存的な考えや、
「アンケートくらい簡単だろう」
「ちょっと面白そうだからやってみる」
という程度の姿勢では、せっかく時間と手間をかけて行う調査の価値が大きく損なわれてしまいます。
アンケート調査の設計は地味で時間のかかる作業ですが、研究の軸をしっかりと定め、先行研究との整合性を検討し、質問の裏づけを明確にすることが、実りある成果を得るための最短ルートです。
研究を甘い見識や期待で始めるのではなく、じっくりと腰を据えて取り組んでいただきたいと、切に願います。