先日、とある方の投稿論文をサポートする機会がありました。
投稿後およそ1カ月ほどで査読結果が返ってきたのですが、査読者は2名。
一人目は
「マイナー修正」で、修正箇所が整えば追加の査読なしにアクセプトできるという前向きな評価。
一方の二人目は、研究の前提となる基盤にあいまいな部分があるとして
「リジェクト」という、
まさに天と地の差で真っ二つの評価となったのです。
編集者の方からは
「第三の査読者を立てるので再提出を検討してください」と連絡がありました。
実は、こうした
真逆の評価がつくケースはそう多くはありませんが、まったく起こりえないわけでもないのが学術論文の世界です。
落ち込んでいる暇はありません。
丁寧にコメントを読み解くと、一人目の査読者からの修正はほぼ納得できる内容で、比較的容易に対応できそうでした。
問題はリジェクトを出した二人目の査読者です。
とはいえ、コメントをよく読むと、リジェクトにもかかわらず
非常に丁寧に「どこがいけないのか」を詳細にフィードバックしてくださってました。
印象としては「悪い論文ではないが、現状では受理は難しい」という感触が伝わってきます
(もちろん、ひいき目かもしれませんが……)。
ここでの最適解は
「二人目の査読者のコメントを徹底的に検討する」ことに尽きます。
具体的には、
「そもそも研究の前提としている事柄は本当に前提たりえるのか?」
「他の可能性を検討せずに前提として断じていないか?」
といった根本部分を問う指摘が大部分の背景にあるようでした。
同じ分野内でも実は細分化された領域があり、そこでは好まれる手法や重視される視点が少しずつ異なります。
だからこそ、あらゆる指摘を包括的にとらえ、スキのない論文を仕上げる必要があるのです。
これが論文投稿の難しさの一因とも言えます。
最終的に、一人目の方は「微修正でアクセプト」、二人目の方は「リジェクト」でどちらの査読者も再査読は行わないということでしたが、
受講生の方と吟味に吟味を重ね、
いただいたコメントには丁寧に対応し、修正箇所やその理由を明記した上で再投稿されました。
こうした姿勢を示すことも、論文執筆においては大切なポイントだと思います。
結果が返ってくるのはまた数カ月先になりますが、
私は十分アクセプトの可能性があると思っています。
今回のケースからわかるように、査読結果が真っ二つに分かれたとしても、論文を諦める必要はありません。
むしろ、懸念点を明確化する大きなチャンスでもあるのです。
大変さはありますが、その分だけ完成度の高い論文へと近づけるきっかけになるはずです。