論文でアンケート調査を用いる場合、単に質問項目を羅列して回答を集めるだけでは、
「なぜその質問が必要なのか」
「得られたデータはどのように解釈できるのか」
が不明瞭になりがちです。
そこで重要になるのが、
理論枠組みという
「ものごとをどの視点からどう捉えるのか」を明示する枠組みです。
理論枠組みがあることで、
アンケート項目同士の関係性や
予想される因果関係を整理でき、
調査結果の解釈に一貫性と妥当性を持たせられます。
さらに、論文全体を通じて
「この調査は何を明らかにしたいのか」が明確になり、
研究の質が格段に向上します。
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以下に簡単な例を示しましょう。
例テーマ:自己効力感と学習成果に関するアンケート調査
たとえば、
「大学生の自己効力感(自分ならできるという感覚)と学習成果との関係」
を調べる研究を想定してみましょう。
理論枠組みとしては、
バンデューラの「自己効力感理論」を採用します。
この理論によれば、人は「成功体験」や「周囲からの称賛」などを通じて自己効力感を高め、その結果、学習行動や成果につながりやすいとされます。
アンケートの項目は、自己効力感を測るための定評ある尺度(例:General Self-Efficacy Scale)を活用したうえで、
学習成果を評価するための成績や試験結果、
あるいは学習習慣(勉強時間、学習意欲など)を問う質問を組み込みます。
さらに、自己効力感と学習成果をつなぐ要因として、
「周囲のサポート」や
「過去の成功体験」、
「学習環境(オンラインか対面か)」などの統制変数(分析上抑えておきたい要因)を盛り込み、
より精緻にデータを解析します。
と、簡単な例ですが、この用意理論枠組みを使うことで、研究の本質の深堀が可能となります。
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なぜ理論枠組みが大切なのか?のポイントをまとめると以下の4点に集約できます。
➀測定の一貫性
理論に基づいて項目を作成することで、
「測りたい概念を的確に測る」質問項目を整合的に設計できます。
➁データの解釈が容易
調査結果を理論に照らし合わせて解釈することで、
「なぜこの傾向が出たのか」を論理的に説明しやすくなります。
➂先行研究との比較
既存の理論や過去の研究成果と照らし合わせることで、
自分の研究の独自性や新たな発見をよりはっきり位置づけることができます。
④論文の説得力向上
結論が「個人的見解」に留まらず、理論という“後ろ盾”を得られるため、
研究全体としての信頼性と妥当性が増します。
アンケート調査を計画する際には、
まず「どの理論枠組みにもとづいて、どんな仮説を立てたいのか」を明確にしてみてください。
その上で、理論的に重要な変数を質問項目に落とし込み、
データ収集の後に理論との関連をしっかり検証する流れを整えます。
こうしたプロセスを踏むことで、論文としての完成度を高め、読者に「なるほど」と納得してもらえる研究へとつなげることがかのうとなります。