大学院への進学は、研究者としての第一歩を踏み出す大切な節目ですが、入学後に提出を求められる研究計画のレベルは、
入試段階の計画とはまったく異なる点に留意しなければなりません。
特に4月や5月は、新入生が研究計画の提出を求められる時期でもあり、
「こんなに大変なことだとは思わなかった」と戸惑う人も少なくありません。
実際、大学院に入ると指導教官から
初期の計画を見直すようにと言われるケースは頻繁に見られます。
入試段階の研究計画は
限られた知識や情報で立てたアイデアにすぎず、学術的に厳密さを欠く部分があるのは当然だからです。
問題は、その後にどう対応していくかにあります。
研究者としての第一歩を踏み出した以上、ふわふわしたイメージだけで研究計画を組み立ててはいけません。
「ちょっと調べればすぐ書けるだろう」という安易な姿勢のままでは、
ゼミ発表や中間報告会などの準備が間に合わず、指導教官に何度も修正を迫られてしまいます。
ときにはテーマをコロコロ変えてしまい、結果的に方向性が定まらず評価を下げることさえあります。
ここでよく使う比喩が「旅行」です。
旅行に行くとき、行き先やルートが決まっていなければ、そもそも旅は始まりません。
研究も同じで、
まずは目的地(研究目的)を明確に定め、
その目的に至るための
ルート(背景や理論枠組み、先行研究の概要、それらを踏まえた研究手法)を慎重に選ぶ必要があります。
これがしっかり定まってはじめて「研究計画ができた」と言えるのです。
そして、この研究計画を完成させる段階で、実は研究の50%以上が進んでいると言っても過言ではありません。
ところが中には「明日ゼミで発表するから今日仕上げたい」という連絡をくださる方もいますが、残念ながらお断りしています。
時間的に無理があるだけでなく、
そのような姿勢では研究を軽んじているとしか思えないからです。
研究計画を詰めるのは一朝一夕でできる作業ではありません。
しっかりと腰を据え、先行研究を調べ、学術的根拠を固め、目的を明確にして手法を選ぶ
――そうしたプロセスを経てこそ、本当の意味で「大学院で研究を始める」ことができるのだと、肝に銘じておきましょう。