《継続研究を論文化するときに起こりやすい問題》
投稿論文や博士論文を進めていると、ひとつの研究テーマを継続的に深めていく場面があります。
学会発表をもとに論文化する場合もあれば、博士論文の一部を投稿論文として発表する場合もあります。
また、同じインタビューデータや調査データを用いて、別の視点から新たな論文を書くこともあります。
このような継続研究は、研究活動として自然なものです。
問題は、同じデータや同じ内容を用いているにもかかわらず、先に発表した研究との関係が十分に説明されないまま投稿されてしまうことです。
《同じデータを使う場合に注意したい重複投稿のリスク》
特に注意したいのは、同じ対象者、同じ調査データ、同じインタビュー内容、同じ分析結果を用いる場合です。
文章を少し書き換えていても、研究目的や結論がほとんど同じであれば、重複投稿や自己剽窃、いわゆるサラミ出版と受け取られる可能性があります。
一方で、同じデータを用いていても、研究目的、理論的視点、分析対象、分析方法、結論が明確に異なる場合には、継続研究として位置づけられることもあります。
たとえば、ある論文では研究全体の変化プロセスを扱い、別の論文ではその一部の要因に焦点を当てるというように、問いの立て方が異なれば、別の研究として成立する可能性があります。
《学会発表・博士論文・既発表研究との関係は隠さない》
ただし、その場合でも大切なのは「隠さないこと」です。
すでに学会発表をしているのか、博士論文として提出予定なのか、別の投稿論文と一部データが重なるのかなど、投稿先の規程を確認し、必要に応じて
本文・注・付記・カバーレターなどで説明することが求められます。
投稿規程によっては、学会大会での発表予定、博士論文としての提出予定、あるいは既発表研究との関係について、
投稿時に明記することを求めている場合もあります。
こうした付記は、形式的なものではなく、研究の透明性を示すための大切な手続きです。
《投稿前に確認したい三つのポイント》
投稿前には、少なくとも次の点を整理しておくとよいでしょう。
第一に、これまでに発表した学会発表、紀要論文、投稿論文、博士論文との関係です。
第二に、今回の論文の新規性です。
前の研究と比べて、どの問いが新しいのか、どの分析が新しいのか、どの結論が新しいのかを説明できる必要があります。
第三に、同じデータを使う場合、どの部分が共通し、どの部分が新しい分析なのかという点です。
データが同じであっても、研究目的や分析視点が明確に異なっていれば、別の研究として説明できる可能性があります。
《査読者や編集委員には「同じ研究」に見えることもある》
本人にとっては「前の研究の続き」や「別の角度からの分析」に見えていても、
査読者や編集委員からは「同じ研究を分けて出している」と見えることがあります。
ここが、継続研究の難しいところです。
研究者本人は、研究の流れや細かな違いをよく理解しています。
しかし、投稿論文を読む側は、その背景をすべて知っているわけではありません。
そのため、既発表研究との違いが本文上で明確に示されていなければ、重複していると判断される可能性があります。
だからこそ、投稿直前ではなく、研究計画や論文構成を考える段階で一度立ち止まることが大切です。
《投稿論文・博士論文では研究倫理への配慮も問われる》
投稿論文や博士論文では、内容そのものの質だけでなく、研究倫理や投稿規程への配慮も問われます。
継続研究をどのように位置づけるか、既発表研究との違いをどう説明するかは、案外難しい判断です。
特に、同じインタビューデータ、同じアンケートデータ、同じ事例研究をもとに複数の論文を書く場合には、慎重な整理が必要です。
どの論文で何を明らかにするのか、研究目的や分析枠組みが重なりすぎていないかを確認しておくことが大切です。
事情が複雑な場合には、一人で判断せず、研究指導者や信頼できる第三者と確認しながら進めると安心です。
Moon Circleでも、こうした投稿前の整理について一緒に考えることが多々あります。
《同じデータを使うこと自体が問題なのではない》
研究を積み重ねていくためには、誠実さが伝わる形で発表していくことが大切です。
同じデータを使うこと自体が、ただちに問題になるわけではありません。
大切なのは、そのデータをどのような問いで読み直し、どのような新しい知見を示すのか。
そして、既発表研究や博士論文、学会発表との関係をどのように説明するのかという点です。
継続研究を投稿論文として発表する際には、研究の新規性と透明性の両方を丁寧に確認しておきたいところです。











