日々、ムーンサークルで論文指導のサポートをしておりますと、さまざまな方々とお会いします。
多くの方は深い探究心と学びへの誠実さを備え、研究をともに進めるうえでも、
まさに「Educated Person」と呼ぶにふさわしい姿勢をお持ちです。
ここでいう「Educated Person」とは、単に高い学歴や専門知識を有するだけではなく、
幅広い教養を身につけ、倫理観や社会的責任を意識しながら、他者と対話を重ねつつ生涯にわたって学び続ける人のことを指しています。
リベラルアーツ教育の理念にも通じるこの在り方は、研究を進めるうえで欠かせない基盤となります。
ところが、ごくまれにではありますが、
そのような前提を欠いた態度で研究を進めようとされる方にお会いすることがあります。
特に、自身の肩書きや立場を誇示して、周囲に十分な配慮を示されない方をお見受けすることがあります。
もちろん、高い地位や職責を得るまでに努力を重ねてこられた背景は多分にあるでしょう。
しかし、研究という知的営為は個人の肩書きだけで成り立つものではありません。
むしろ、さまざまな視点を取り込み、対話を通じて問題を掘り下げ、知見を深める過程こそが研究の本質
です。
そのため、周囲の協力や指導を得ながら進めていく姿勢が欠かせないのです。
私どもムーンサークルでは、研究を共に歩むうえでの
基本的な礼儀や相互の敬意が守られない場合、残念ながらお引き受けを見送ることがございます。
これは「私たちを特別に尊重してほしい」というわけではなく、
「研究の成果を最大限に高めるためには、知性とともに品性や人間性が不可欠である」という考えに基づく判断です。
研究は一朝一夕に成し遂げられるものではなく、長い時間をかけて粘り強く取り組むものです。
その過程をともに歩むパートナーとして、互いへの配慮や敬意なしには建設的な関係を築くのは難しいと感じております。
しばしばインターネットやSNSで目にする
「何を言えるかが知性、何を言わないかが品性、どう伝えるかが人間性」
という言葉があります。これは、研究以前の大前提としても示唆に富むものです。
いかに知性的な内容を語れるかは、その人の学識や思考力を示すでしょう。
しかし、それ以上に大切なのは、どの言葉をあえて口にせず、どのような姿勢と言葉遣いで相手に伝えるかという点にあるように思えます。
礼を失した発言や、自分の都合だけを押しつける振る舞いは、仮に知的に優れていようとも、周囲との協力や指導を得る可能性を狭めるばかりか、その方ご自身が得られるはずの学びの機会を奪いかねません。
ドイツの文豪ゲーテは、
「人の品性は、その人がどんな批判をするかによって分かる。」
と述べています。
批判そのものが悪いわけではなく、どのような視点と態度で批判をするかによって、その人が何を大切にしているかが映し出されるのだと考えられます。
研究の場においても、建設的な議論や指摘は成果を高めるうえで不可欠ですが、
あまりに独善的な批判や尊大な態度は、却って学問的探究の機会を失わせてしまいかねません。
ムーンサークルにおいても、真摯な学びを続けられる方々は、最初の段階で多少の戸惑いや不安があっても、着実に基礎から学び直し、ご研究を前進させていかれます。
そうした姿勢こそが、研究を完成へと導く最も確実な方法であり、指導教官や周囲の方々との良好な関係を育む土台となるのです。
改めて、研究を志される皆さまには、
「何を言えるかが知性、何を言わないかが品性、どう伝えるかが人間性」
という言葉を胸に留めていただければ幸いです。
高等教育の場においては、まさに
知性だけでなく、品性と人間性が試されることになります。
謙虚に学び、異なる価値観や意見に耳を傾け、尊重し合う姿勢があってこそ、研究の成果は最大化されると信じております。
研究とは、単なる知識の蓄積ではなく、新たな知見を切り拓き、社会に貢献する行為です。
そのために必要なのは、批判的思考力や専門知識だけではありません。
相手を敬い、言葉を慎み、円滑なコミュニケーションを図ること
これらの要素が一体となってこそ、研究の真の価値が生まれるのではないでしょうか。
ムーンサークルとしては、研究を通じて皆さまがご自身の可能性を広げ、豊かな学問的成果へと結実されるよう、これからも誠心誠意サポートしてまいります。
どうか皆さまも、ご自身の知性・品性・人間性を磨き続けることを忘れずに、研究の道を着実に歩まれることを心より願っております。