【修論提出にむけての第一ハードル】
「修士論文は提出すれば通る」という話をよく耳にします。
確かに、提出できればほとんどの場合合格しますが、
その前に重要な関門があることを忘れてはいけません。
実際、論文の提出許可を得るまでに、指導教官や主査・副査による厳しいチェックが行われ、多くの学生が
この段階でふるいにかけられます。
多くの大学院では、11月末から12月にかけて仮提出が行われ、ここで論文の完成度が確認されます。
この段階で
「提出しても通らない」と判断されれば、正式な提出を許されないこともあります。
仮提出とはいえ、指導教官や査読者の指摘に真摯に対応し、質を高める努力をすることが、最終的な合格に繋がります。
このプロセスは非常に重要であり、
実質的に提出前の最終審査と考えることができます。
【提出後の厳しい審査】
仮に提出できたとしても、完成度が低ければ不合格になることは珍しくありません。
例えば、指導教官が良しとしても、
口頭試問や副査からの厳しい指摘で、論文の修正を求められ、不合格になるケースもあります。
実際、私たちのところにも毎年4月や5月頃になると、1月に不合格になった修士論文の再提出に向けたサポート依頼が多く寄せられます。
大学院によっても審査の基準は異なり、同じ完成度の論文でも、大学院によっては通る場合もあれば、厳しく評価される場合もあります。
【過去に不合格になった一事例】
以前、提出2か月前に認知心理学の実験論文のサポート依頼を受けたことがあります。
実験の仮説や目的が思い付きに近く、実験そのものが未完成の状態でした。
時間も限られていたため、とにかく実験を行い、結果と考察で体裁を整えて急ぎまとめる形で進めました。
結果的に、実験の結果は当たり前の内容であり、仮説の新規性も欠けていました。
しかし、この方は「とにかく出せば通るので形が出来上がっていればよい」というスタンスで、大学院ん名前を言いたくないとのこと、また、提出の段階で大学側が仮評価を行わない方針だったため、そのまま提出されました。
後日、口頭試問において
「仮説の論理性が薄いこと」
「実験自体が学部レベルであること」
が厳しく指摘されました。
この結果、厳しい評価を受け、不合格となったのです。
このレベルでも実験を行い考察していれば合格となるパターンが多いのですが、今回は厳しい評価でした。
大学院名が入った書類で、トップレベルの研究大学院であることがこちらも把握でき、「それなら納得」と思ったケースでした。
大学院名を明かしたくない方もいらっしゃいますが、最初からわかっていれば「この研究計画では通らない」とアドバイスできたと思います。
こういった事例からもわかるように、
論文の質が大学院によって異なる基準で評価されることを理解することが重要です。
【出せば通るという考えのリスク】
「修士論文は提出すれば通る」という考え方は、やはり危険です。
確かに一部の大学院では、提出後に最低限の基準をクリアすれば通る場合もありますが、それを期待してはなりません。
むしろ、論文の質をできる限り高め、完成度を上げるための努力を惜しまずに取り組むことが、合格への最も確実な道です。