研究計画を立てる際に、まずやりがちな失敗の一つが、
目的や理論的根拠をしっかり固めないまま、いきなり質問項目を作ってしまうことです。
以前は「経験」や「直感」で「こんな質問を入れれば面白いのでは」と考える方が多かったのですが、最近ではさらに、インターネット検索やAIツールに頼って
「即座に答えを得たい」という傾向も増えています。
確かに便利ではありますが、研究が目指すものや先行研究との関連を深く考えずに質問項目を作成してしまうと、
後々、データをどう解釈し、何を明らかにしたいのかが曖昧になり、修正に大変な労力がかかるケースも少なくありません。
アンケート調査の質問項目を作るときは、基本的に
「どんな理論や先行研究に基づいて、何を測定しようとしているのか」を明確にする必要があります。
質問はただ並べればいいのではなく、
妥当性(測りたい概念を正確に測れているか)や
信頼性(同じ項目を繰り返し使っても安定した結果が得られるか)を考慮して設計しなければなりません。
ゼロから新しい項目を作る場合は、予備調査や先行研究のレビューを行い、
一つひとつの質問が理論的裏づけをもっているかを丹念に検証していくプロセスが欠かせないのです。
さらに最近では、「アンケート調査だけでなく半構造化面接を行いたい」という相談も増えています。
半構造化面接の場合、あらかじめ設定した
「分析テーマ」が大きな軸となります。
このテーマに沿って大まかな質問ガイドを作り、受訪者の自由な語りを引き出しつつ、焦点となる内容を深堀りしていく調査手法です。
しかし、ここでも同じく「なぜそのテーマを扱いたいのか」「どの理論や仮説を踏まえてその質問をするのか」が重要です。
理論的根拠がないまま単に「こんなことが気になる」と聞いても、それがどのように分析され、研究目的に結びつくのかが不明瞭なままになりがちです。
結局のところ、研究の土台となるのは
「問題意識」と「先行研究の理解」であり、この二つが結びついて初めて
「本研究は何を明らかにするのか」が定まります。
そこから初めて「どんな手法を用い、どんな質問項目を設定するのか」といった具体的な設計が筋道立てて考えられるのです。
インターネット検索やAIツールをうまく活用すること自体は悪いことではありませんが、それを鵜呑みにしてしまうと、一番大切な研究の中核が曖昧なまま進んでしまう危険があります。結果的には遠回りや手戻りが増えてしまうでしょう。
最初の段階こそ時間がかかりますが、ここを疎かにせず、問題意識をはっきりさせ、先行研究をきちんと読み込んでから手法や質問項目を検討することが、研究全体をスムーズに完成へ導く最大の近道といえます。