博士課程に在籍されている方やこれから博士課程への進学を考えていらっしゃる方のなかには、
「博士論文が完成したら、いつでも提出できるのでは?」
と思われている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際は、大学院ごとに
「暗黙のルール」や
「明文化された提出要件」があり、
それを満たさなければ学位申請ができないという場合がほとんどです。
今日は、私たちが過去に博士論文サポートを行ってきたなかで感じた、
提出要件の多様さについてまとめてみたいと思います。
あくまでも一例ではありますが、
これから博士論文を執筆・提出しようとされている方のご参考になれば幸いです。
【提出要件で多いのは「査読付き投稿論文」のアクセプト】
博士論文の提出要件でもっとも多く挙げられるのは、
「査読付き投稿論文が最低1本以上、学会誌などでアクセプトされていること」です。
なかには「最低2本」「最低3本」と本数を明確に設定している大学院もあり、
その1本は海外学会誌に通っていることや、
インパクトファクターの高さまで求められるケースも珍しくありません。
さらに投稿先も、
・学会誌であること
・学内の「紀要」は認められないことが多い
・ただし、紀要であっても1本通っていればOKという大学院もある
と、大学院ごとにバラつきが見られます。
一般的に「紀要」は投稿者がその大学の関係者に限られるため、
比較的アクセプトされるハードルが低いとされる一方、
紀要でもOKな大学院では、
そのぶん評価基準を高く設定しているように感じます。
【複数の研究をまとめた量的要件】
博士論文は文字数だけでなく、いくつの研究を含んでいるかという
量的要件が設定されることもあります。
1本の研究成果をまとめればよい場合もあれば、
3〜4本の論文を統合して1つの博士論文とするよう求められることもあります。
こちらも本当にさまざまです。
【質の担保とAI時代の注意点】
査読付きの投稿先にも、最近は怪しげなジャーナルが紛れ込んでいるという話も耳にします。
けれども博士論文は最終的に公開され、学位そのものの価値にも関わるため、大学院側としては一定の水準を保つことを重視しています。
そのため、「数が通っていればいい」というわけではなく、
論文の質も厳しく見られるのが現状です。
さらに近年は、AIを活用した文章生成や翻訳ツールが普及し、
執筆のプロセスにも大きな変化が起きています。
AIの助けを上手に借りること自体は有益ですが、いわゆるAIで書いた文章をそのままコピペするような方法では、当然ながら審査で認められない可能性が高いでしょう。
研究内容や論文の一貫性、オリジナリティは、依然として執筆者自身の学問的な思考や探究力が問われる領域です。
以上ように、博士論文の提出要件は大学院や専攻領域によって実に多岐にわたります。
これらのポイントをできるだけ早い段階で把握し、計画的に研究を進めることが、スムーズな学位取得への第一歩になります。
博士論文の提出直前になってから「あれ? この投稿先じゃ認められないの?」と慌てるケースは、実は意外と多いものです。
要件を早めに把握し、質の高い研究を是非目指してください。
皆さまの研究がさらに深まり、納得のいく形で博士論文を提出できるよう、心より応援しております。