12月に入り、今までに経験したことのないお問い合わせが立て続けに3件ありました。
その内容は次のようなものでした。
「代行業者にお金を払って卒論を書いてもらったが、何が書いてあるのか理解できない。
このまま提出すると先生にばれる可能性があるので、内容を教えてほしい。」
このような相談を受けた際、まず私たちが考えたのは、他人が作成した論文を自分の名義で提出することが抱える
法的および倫理的な問題です。
➀私文書偽造罪
他人が作成した論文を自分の名義で提出することは、私文書偽造罪に該当する可能性があります。これは法的に重大な問題です
➁偽計業務妨害罪
大学は学生の学力や研究能力を評価する場です
。代行された論文を提出する行為は、大学の正当な業務を妨害するものとみなされ、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。
➂著作権侵害および損害賠償責任
代行業者が無断で他者の著作物を使用している場合、その責任は依頼者にも及び、損害賠償を求められるリスクがあります。
④大学からの懲戒処分
こうした行為は大学からカンニング行為と同等の不正行為とみなされ、停学や退学などの厳しい処分を受ける可能性があります。
★サポートを検討した経緯と断念した理由★
しかし、詳細を聞き取る中で、以下の課題が明らかになりました。
◎引用元の不明瞭さ
代行された論文に引用されている論文や書籍が明記されていない、あるいは特定できないという状況でした。
そのため、引用元を一から探し出す膨大な作業が求められました。
◎依頼内容の現実性
「すべての引用元を見つけて、内容をまとめ、それを教えてほしい」というご要望が多く、これはサポートというより、
さらに深刻な倫理的問題を助長するものと判断しました。
最終的に、私たちの理念や方針とかけ離れていると感じたため、全てのご依頼をお断りすることにしました。
★論文作成の意義と私たちの考え★
修士論文や卒業論文の作成は、確かに苦しい作業です。
しかし、自分の手で何かを成し遂げたという経験は、社会に出てからの自信や基盤となります。
これは、高等教育を修了した社会人になるための重要な通過儀礼とも言えるでしょう。
今回のご依頼のケースの背景には、AIの普及やそれに伴う意識の変化も影響しているのかもしれません。
昨年まではなかったこうしたご依頼が立て続けに起こったことが気になり、今回この記事を書かせていただきました。
私たちは、学生の皆さんが自分自身の力で研究や執筆に向き合い、それを通じて成長することをサポートしていきたいと考えています。
一時的な解決ではなく、長期的な自己成長につながる支援こそが、私たちの目指すところです。