ある方法が効果があることを検証したい
実践の場で何らかのトレーニングや教育の指導にかかわってこられた社会人大学院生のかたが、よく希望として取り上げられる研究に効果研究があります。
ある訓練や学習スタイル、テキストなどを一定期間,被験者に試して、その効果があるかどうかを検証する研究です。
ほとんどの場合、その方法なり教材なりは効果があるという「確信」をもって研究計画に入られるわけですが、その方法は「絶対に」効果がある、という妄想は研究の一歩としても、いざ、研究計画を立てるときには、主観的な「確信」はちょっと横においておかねばなりません。
実験群と統制群を比較してその効果を検証…効果研究(比較実験・対照実験)
一つのグループに条件を加えてBefore & Afterを検証するという方法もありますが、通常は、二つ、またはそれ以上の群を比較するという方法をとります。いわゆる統制群と実験群(対象群)をつくって条件の差によって結果の異同やその関係を検証して、何らかの一般法則(正直、ここまで行けばBEST!)を推測していきます。
形としてはわかりやすい研究方法ですが、絶対効果があるという思い込みからか、統制の甘い方が多く見受けられます。きっちりと統制しないと、「雑音」がはいって本当にその条件の違いが結果に影響したのかどうかわからなくなります。例えば、年齢や性別の統制は誰でも思いつくところですが、そういった「現在」の統制だけでなく、過去においてその方法なりテキストなりを使用したことあるかないかのチェックなど「過去」の統制にも留意する必要があります。
効果があるという仮説を先行研究から導く
それと効果があるという「確信」が往々にして。ご自身の経験から「のみ」で持たれる方が多い。アイデアの原点としてご自身の経験からの推測は重要ですが、研究に昇華するためには、先行研究の延長上にその仮説を成り立たたせて、論じていかねばなりません。また、先行研究を吟味するプロセスで、その研究領域での重要論文はどれなのかも押さえていかねばなりません。
確認できる効果を得ることは結構難しい
最後にちょっと厳しいことを言うと、卒業論文や修士論文の場合、時間の制約もあるため、効果を上げるに十分な期間を設けることが難しく、そのせいもあって、華々しい効果が確認されたということはまず稀です。
正直、あっちを切り取りこっちを切り取り、統計を色々駆使して、何らかの効果があったことを「探していく」、場合が多いです。
一見シンプルで分かりやすそうな研究方法ですが、意外にも難しい。
このタイプの研究を考えられている方は、条件をしっかり統制し、先行研究からその効果が論理的に導かれることを抑え、できるだけ早く準備に取り掛かられて、余裕をもって望まれてくださいね。